こんにちは。プロダクト開発グループの高山です。
日頃は自社サービスである FANSHIP を iPhone 上で利用するために必要な SDK の開発を主に担当しています。
ここ一年半ほど、開発効率を上げる目的で43インチディスプレイを(解像度 3840x2160 で)使用していたのですが、個人的にはかなり良い開発体験ができたため、本日は導入してみて良いと思った点、および注意点などをご紹介します。
※記事内の「最近」は 2021年1月22日 時点を指します
要約
- 設置はなるべく2人以上で慎重に
- 表示領域の広さはある程度生産性の向上に役立つ
- iOSアプリ開発においては巨大Storyboardのメンテナンスに便利
- PC/Macとの接続時はアダプタの対応規格等に注意
- 故障時の修理はそこそこ面倒でお金もかかる
ディスプレイの選択
家電量販店で大きいテレビに6桁の価格が値札に記載されている光景を見たことがないでしょうか?
大きいディスプレイはどうしても高いイメージがあるかと思いますが、2年ほど前にはすでに4万円台のディスプレイが登場し始めていました。
最近では家電量販店やAmazonなどでも、4K解像度を表示できるようなモニターで、4〜5万円程度で購入できるものが見つかると思います。
私が購入したものは、アイ・オー・データ機器製の EX-LD4K431DB という製品でした。
※ 現在は生産が終了しており入手できませんが、後続モデルがありますので、気になった方はリンクを辿ってみてください。
ディスプレイの設置
原則「2人以上」で作業
アイ・オー・データ機器製品の場合、必ずと言っていいほど説明書に「2人以上で作業してください」とありますが、他社製品を利用する場合においてもおそらく一人で作業するのはあまりおすすめできません。
というのも、ディスプレイもこの大きさになると重量が 9 kg 近くになりますので、人によっては箱から取り出す際に怪我をしたり、ディスプレイを破損してしまう可能性があります。
特にベゼルレスデザインのディスプレイの場合、表示領域にうっかり指をかけて力を入れてしまったり、ベゼル部分に強い力を入れて持ち上げた場合に 液晶のライン抜け を引き起こすことがあります。
到着と同時に工場に送り返すことがないように、取り扱いには十分な注意が必要です。
梱包材はなるべく取っておく
後述の「修理における注意」で説明しますが、ダンボールや緩衝材などの梱包材は、極力捨てずに取っておくことが望ましいです。
揺れ対策について
安定した場所に設置していても、ディスプレイによっては「タイピングの振動がディスプレイを揺らしてしまう」ケースがあります。
こうした衝撃の振動はすぐにはディスプレイの故障につながるものではないとは思いますが、気になる場合は専用ベルトを使って地震対策も兼ねて固定するのが良いでしょう。
PC/Mac との接続
通常のディスプレイと同様に、HDMIケーブルやDisplayPort用ケーブルで接続可能です。
ただし、いくつかの注意点があります。
MacでType-C変換アダプターを用いる場合
Macとの接続において USB Type-C - HDMI 変換アダプターを利用する際、アダプターが 4K/60p の出力をサポートしていない場合、60fpsの出力ができず、マウスカーソル移動や画面遷移を含むアニメーションがカクついて表示されます。
特に複数の出力を可能にする USB Type-Cハブ などにおいては、パッケージに小さい文字で書かれていたり、記載されていない場合もありますので、注意が必要です。
Windows搭載マシンとの接続について
Windowsを搭載したPCとの接続はもちろん可能なのですが、一部の端末では映像を表示できないケースがあるようです。
私の経験ですが、 2016年モデルの Let's Note との接続を行った際、解像度等をどのように設定しても映像を出力できない現象に遭遇したことがあります。
※ このモデル特有の機能である「小画面表示」を利用して 1920x1080 の出力は成功しましたが、通常の出力が行なえませんでした。
個人的に推奨する接続方法
USB-C to HDMI ケーブルを使うなどして、アダプターを用いずに直接ディスプレイと接続すると安定するという印象があります。
Macの場合は、ポートが2つしかないモデルもありますので、まるまる1個をディスプレイに使うのが憚られる場合があるかもしれませんが、安定性を求めるのであれば検討する価値はあるかと思います。
業務との相性
4K UHDTV(解像度 3840×2160)の「純粋に画面が大きい」という恩恵は、いろいろなところで実感できます。
iOS アプリケーション開発
この画像は iOSアプリケーションの開発を行うシーンを再現したものですが、
- ソースコードを表示できる範囲が広い
- Storyboardを表示できる領域が広い
- Clang などのログが1行に収まることが多い(さすがに xcodebuildのログは無理ですが...)
といったところに気づかれたかと思います。
最近はSwiftUIが浸透しつつあり、巨大なStoryboardをいきなり作成するケースは少なくなっているとは思いますが、こうした複雑なプロジェクトをメンテナンスする際には大変便利です。
コードレビュー
※画像はイメージです。
コードレビューなどで Side-by-Side 表示する場合も、十分な高さと幅でコードを表示できるので、一度慣れてしまうと小さなディスプレイには戻れなくなるかも知れません。
Excel/Googleスプレッドシートの編集
表示可能領域が大きいため、シートを上下左右にスクロールする必要がほぼなくなります。
※画像はイメージです。
ただ、4K画質で表示する前提でシートを作ってしまうと、チームメンバーに共有した際に見づらくなることがありますので、その点には気をつけないといけません。
特に行列の固定表示をする場合は、読む人が使用するディスプレイのサイズに注意して行わないと「値が全然読めない」と言われてしまうかも知れません。
使っていて気になった点
Macだとメニューバーが「遠い」
前項のスクリーンショットを見るとわかりますが、メニューバーの操作項目が左上に配置されますので、ディスプレイサイズが大きくなると自然と「首を左上に向ける作業」が増えてしまいます。
Windowsだとウィンドウに操作メニューがついてきますので、あまり気にならないかも知れませんね。
「表示するだけ」の領域ができる
たとえば「小さいウィンドウを2,3個配置すれば済むような作業」がメインだと、ディスプレイの大半は「壁紙を表示するだけの領域」になってしまうかもしれません。
無駄を排したい方にとっては「気になる」ポイントです。
たまに解像度やフレームレートがおかしくなる
数回ほど経験したことがありますが、MacBookProと大きなディスプレイを接続して使っている場合に、たまに表示解像度を 3840×2160 に指定できなくなったり、フレームレートを 60fps にできなくなったりする場合がありました。
いずれの場合もVRAMをリセットすることで解決できたので、もし発生したら試してみてください。
修理における注意
ディスプレイは精密機械である以上、いつかは壊れてしまうものです。
運が悪ければ、説明書どおりに設置しても初期不良などで「買って数日で動かなくなった」なんてこともありえます。
そして大きなディスプレイの場合、通常のディスプレイに対する修理とは異なる部分がいささかあります。
ディスプレイを梱包していたダンボールは極力取っておく
ディスプレイが故障した場合、工場に郵送して修理してもらうことになりますが、製品を受け取った時のダンボールと梱包材が手元にない場合だと配達を受け付けてもらえないケースが多いようです。
ただ、大きなディスプレイだとダンボールだけでもかなりのスペースを占有するため、仕方無く廃棄するケースも多いと思います。
もし梱包材が手元にない場合、別の輸送方法で届けてもらうことになりますが、「着払いを利用できない」といった制限事項が存在する可能性がありますので、注意しましょう。
私も1度、梱包材を捨ててしまった後にヤマト運輸に依頼したことがあるのですが、その際は「家財宅急便」として依頼するよりほかなく、アイ・オー・データ機器からは「着払いで構いません」と言われていたのですが、仕方なく元払いで4500円ほどの出費が発生してしまいました。
修理は1ヶ月程度の時間がかかることがある
修理工場において、部品不足が原因で修理が長引く場合がありますが、特に大きなディスプレイの場合、代替となる部品を確保するのに1ヶ月ほどかかるようなこともあるようです。
私も一度初期不良により修理を依頼したことがありますが、その時は修理されて帰って来るまでの1ヶ月半ほどかかりました。
せっかく大きなディスプレイを入手して作業効率が上がったと思ったら、ある日思わぬ故障により(一時的にとはいえ)恩恵が途絶えてしまう、そんなリスクがあるという点は覚えておきたいところです。
最後に
以上、少し長くなってしまいましたが、43インチディスプレイのレビューでした。
大きなディスプレイを使用したことがない方にとっては、あまりメリットが想像できない部分があるとは思います。
ただ、表示領域が狭いと感じ、ディスプレイを増設したいと考えた際に「将来的にまたディスプレイを2つくらい買うかもしれない」と少しでも思われた方は、小さなディスプレイのかわりに大きなディスプレイを1つ購入する、ということを選択肢に入れてみると良いかも知れません。
余談ですが、M1プロセッサを搭載した13インチのMacBook Proは「一度に接続できる外部ディスプレイが一つだけ」という制約があるようです。このようにハードウェア周りの制約をうまく回避できる可能性があることも、大きなディスプレイを使用するメリットになりそうですね。